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チェーンの構造とどんなふうに摩耗しているかを観察

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上から、SRAM PC991使用済み、PC991未使用(長さ調節のため使用前に切り離したリンク)、SHIMANO CN-7701新品。
 

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PC991の新品を分解。bushingというのはrollerの軸かつ両端がinner platesの穴に貫入してinner link構成し、なおかつピンが貫通する軸受け筒である。しかしbushingを利用してouter linkなしでも堅牢な自立構造を持つinner linkが使われている自転車のチェーンは11~9速のチェーンでは珍しい。bushinglessは横方向の柔軟性を生み変速の助けとなるのと、おそらく軽量化できることと、洗浄の際汚れが抜けやすいとかオイルの内部への浸透が良くなることなどの利点がある設計なのだろう。
 

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PC991使用済みを分解。
 

 
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PC991のイナープレートの摩耗の状態。アウタープレートの内側と摩擦。
 

 
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PC991のアウタープレート内側の摩耗の状態。イナープレート外側と摩擦。アウタープレートとイナープレートの間の隙間は潤滑油を内部に浸透させていくのに注油するポイントでもあり、走行中に砂塵や雨水などありがたくない物質が入り込む口でもある。この隙間が摩耗して広がればゴミは入りやすくなるということか。
 

 
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PC991のイナープレート内側の摩耗の状態。ブッシングの代わりになる穴の縁のフジツボ型の円筒形突起を、(半)袖のように飛び出ているのでここではsleeveと呼んでおく。スリーブの周りの平面部分はローラーの側面と摩擦する。
 

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イナープレートのスリーヴの内側はピンと摩擦。この部分の摩耗がチェーンの伸びの主な原因。
 

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PC991のイナープレートのスリーヴの外側はローラーの内面と摩擦する。ローラーが回らないほどに汚れが溜まっていると、摩耗に偏りが出るだろうし、歯車類との摩擦が増え離合がギクシャクしそうだ。またローラーの遊びのおかげで、少しずつ摩耗していくパーツ同士の噛み合わせの誤差を埋めてくれるのだと思う。歯車と噛み合っていない時は負荷がかからない部分だ。
 

 
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PC991のローラーの摩耗の状態。歯車類と咬み合わさるとき以外は大きな負荷が掛からない。ローラーの側面はスリーブの周りのイナープレートの内面と摩擦する。ローラーは左右のイナープレートのスリーヴを軸にして回転するようになっているためスリーヴとの間にも摩擦が起こる。ローラーの遊びは大きめなので内側にゴミを溜めやすい。ローラーの外周面はやはり摩耗するが汚れは溜まりにくい場所ではある。
 

 
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ローラーの内側が三層に色分かれして見えるのは、上の写真を見れば分かる。イナープレートのスリーヴの長さは左右合わせてもローラーの厚みに及ばない。だから薄らと隙間が空く。三層の真ん中の黒い帯はこの隙間の位置に来るので、ほとんど摩耗していないのだろう。
 

 
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PC991のピンの摩耗の状態。ピンの両端にはアウタープレートが固定される。中程のよく研かれた二つの帯はイナープレートのスリーヴの内側と摩擦している部分。この摩耗もチェーンの伸びの主原因。真ん中の黒い細い筋は上の写真を見れば理由は自ずから明らかになる。イナープレートとローラーの隙間から注された潤滑油は左右のスリーブの隙間からピンの中央に達し、汚れを押し出しながら左右に分かれてスリーブの内側とピンの間をきれいにしながら潤滑していく。ここまで潤滑油が届いていないとチェーンの伸びは速まる。

 このピンを抜く時に、チェーン切り工具の矢で写真のピンの手前から奥に向かって押し出した。ピンの両端は糸巻きのように少し幅が広くなっている。これによってアウタープレートが外れないようになっている。奥の縁は一度も外プレートの穴を通過していないのできれいだが、手前の縁は2回外プレートの穴を通過しているので少し削れている。コネクティングリンクでチェーンを繋ぐ品なので、このピンを再使用するわけではない。
 長さ調節する時にこのピンを片方の外プレートからは外すがもう一方の外プレートにはぎりぎりで残るようにしておき、繋ぐ時にこのピンを逆向きに押し込んで元に戻すような繋ぎ方もできないことではない。しかし外プレートが外れる危険性は無ではない。多段変速用の幅の狭いデリケートな作りのチェーンではやらない方が良い。
 

 
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SHIMANO CN-7701(長さ調節で切り離した未使用のリンク)を分解したところ。SRAMのPC911と構造はあまり変わらないが、ピンは中空ではないし柔らかいようだ。この写真でもピンの写真下側の縁はまくれてしまっているのが分かるだろう。一回抜いてしまうと糸巻きの縁の盛り上がりのようなものが大きく削れてしまう。ピンを片方の外プレートからは外すがもう一方の外プレートにはぎりぎりで残るようにして一旦チェーンを切り、洗浄するとか何かの応急措置をしてからこのピンを逆向きに押し込んで元に戻すような繋ぎ方はチェーン切れを起こすに違いない。そのためSHIMANOではアンプル型コネクティングピンを用いて繋ぐ。新品チェーンに一つ付いているが、チェーンリングを小さくしたりとかで再度長さ調節するために切り詰めてから繋ぎ合わせたりする場合は新たなコネクティングピンが必要。
 
 

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それからイナープレートのスリーヴが左右ぴったりと合わさる状態でローラーが自由に回るようなプレート間距離になる。これはSRAMとは決定的に違う。SHIMANOの方が遊びが少ない設計で至極自然に思える。隙間が狭い方が外部から浸透してきた潤滑油の移動速度が緩くなり、潤滑効果が長持ちしそうな気もする。歓迎できない汚れの侵入も隙間が狭い方が少ないと思われる。SRAMのチェーンも6、7年は使っていて、非常に高性能であることは分かっている。ROTORのQ-ringとの相性がよく、SHIMANOのコンポに紛れ込ませても全く違和感がない。SRAMの設計は潤滑油が浸透しやすく汚れの排出もスムーズになりそうだが、雨で洗われたりすると奥の奥まできれいに洗われて油切れを起こしやすそうだ。実際、雨の日の走行では時々注油しながら走っていた。

 このCN-7701を今度交換する折に、どんなふうに摩耗しているのか中を調べてみたい。

by hills_mountains | 2014-08-09 06:03 | 自転車パーツ・用品・手入れ | Comments(0)

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