大量に焙煎を行なっている工場などで生豆を焙煎機に入れる前にどこまで欠点豆を除外しているのかはいざ知らず、自分たちがARMS Share Roasteryで自焙煎するときは丁寧にハンドピッキングを行う。虫食い豆や傷豆や、それにカビが入った豆、白い未成熟豆、スプーンのように反って薄っぺらな豆、枯れたような色をした豆などを抜いていく。
今日はグァテマラのラ・プロヴィデンシア農園 パカマラ種を手撰りした。かなり大粒の豆だ。
除外した豆の代表的なものがこれら。虫食いや傷からカビが入った豆や小さな俵形の豆。俵形の豆は外見は異常が見当たらないものが多いが、焼き上がりを見ると他の豆よりも色が浅かったり噛んで見てパリッとした歯応えがなくボリボリと固い。風味も薄い。
今回は除外した豆の断面を見てみる。焼き上がった豆の断面を観察することで学ぶことが多いこと日本焙煎技術普及協会の竹林氏を介して知ったバンカムツルのブログでも取り上げられているが、除外した豆がどうなっているのかを確かめることも有意義だと思う。生豆はよく研がれた包丁で切ることができる。固い餅を切るような手応えがある。
明らかな傷豆。傷に菌が入り腐敗し青くカビている。
切り裂かれた豆。傷口が異常な発酵をしているし青カビも着いている。
かなり目立つ虫食い穴に青カビが生えている。針の穴のような虫食い穴でも中にカビが入っていることがある。乾燥状態で見逃したとしても、お湯で洗浄すると虫穴の空洞によって浮いたり、青カビや腐敗した際の赤や黄色が透けて見えることが多く、洗浄中や洗浄後に除外することができる。
大きく欠けていてカビが見える。また厚みがなく白っぽい。
虫食い穴があり、小さい方の穴はうっすら緑色になっている。カビだ。しかし、半分に切った断面には虫穴やカビが見えない。
豆の内側に虫穴が見える。これも豆の端の方だけが食われているようで、断面はきれいだ。
これは豆の表面には大きな穴や傷がなかったが、豆の色が斑らでカビらしきものが黒っぽく透けているように見えた。洗浄するともっとはっきりとカビの青い色が透けて見えると思う。
これは明らかな欠点豆と言えるのかどうかわからないが、600g中ほんの2、3粒見つかった緑色の汚点が無数にあるもの。とりあえず抜いて観察することにした。表面に汚れがついているというよりは表層に色がついている。また身の内部は黒っぽい。
上で見た傷豆、虫食い豆、カビ豆はほんの一例で全部ではない。産地である程度選り分けて出荷されていてもたくさん見つかる。洗浄後にも見つかる。
ここから下は平均的な豆の色とかなり違うもの、痩せた豆、俵形の(小粒の)豆だ。 この豆は白くて薄っぺらだ。薄いから焦げてしまうと思いきや、こういうのは浅く焼けることも多い。 次は表面が斑らで一部が白っぽく中の黒ぽい色が透けているので切ってみた。もしかしたら欠点豆ではないかもしれない。
次の二つは異様に黒っぽかったもの。外見は問題なさそうだったが、数が少なかったので除外して切ってみた。
黒い層が他の部分から際立って見える。黒い層を取り囲んでいる部分が白っぽくて透けている。これも欠点豆なのかどうかはわからない。
これも黒っぽかったがカビなどはなく身もふっくらしているように見える。欠点豆ではないかもしれない。
俵形の実の断面。通常の豆は二粒が腹合わせになって果肉に包まれているが、俵形の実は一粒で果肉に包まれているらしい。少数派だ。
これは珍しい例。のの字になっていない。分厚いものが丸まっているようだ。
通常のコーヒー豆と違って断面がまん丸だが、のの字に巻いている。層が若干分厚く見える。
上段の3つは俵形の実が焼けた様子。大きく膨らんで入るが風味は弱い。噛んで見てもパリとせずボリボリと硬さを感じる。下段は他の豆より表面の色が薄く焼きあがったもので、風味が薄い。噛んだ時の抵抗が大きい。どれもエチオピア グジ。これを焼いたときは、虫食い豆とカビ豆や傷豆など明らかな欠点豆だけを抜いて、手撰りをやめた。
最後は表面はいい色合いでふっくらと焼きあがったもの。上段は焼いてから1月経っているエチオピアのグジ。油が染み出している様子が見て取れる。
下段は焼いてから1週間ほど経ったエチオピアのイルガチェフェ・コケ。
両方ともまずまずの焼き上がりだと思っているが、こういう写真を撮り始めたのはごく最近だ。香りも味も良く仕上がった珈琲豆のサンプルの断面を記録しておき、他のものとどう違うのか比較などすれば、何か違いがわかるのではないかと思っている。